【戯曲/演出/構成】
小栗剛(qui-co.)
【出演】
佐藤健士(キコ/qui-co.)
東澤有香(キコ/qui-co.)
藤原薫(十七戦地)
川上憲心(劇団風情)
柘植裕士
林愛子
家田三成
吉田能(あやめ十八番、花掘レ)
エリカ(BLASH)
and more!!
(オファーとオーディション合格者含め 全20名前後を予定)
【スタッフ】
舞台監督:吉倉優喜
照明:小林愛子
音響:杉山碧(La Sens)
舞台美術:平山正太郎(Centreline Associates)
メインテーマ:「valkyrie(仮)」by エリカ(BLASH)
制作:サリバン・レコード
【劇場】
座・高円寺 2
http://za-koenji.jp/guide/index.html
【タイムテーブル】
2018年
5月2日(水) 19:00
5月3日(木) 12:00/17:00
【料金】
前売 3,000円
当日 3,500円
中高生 1,500円(前売/当日)
本公演は演劇グループ「キコ/qui-co.」の第10回目の本公演となります。
1.「地図にない町」を舞台に、「遊女」と「女衒」の話を「現代的」に描きます。
2.「音楽」をフィーチャーした作品になります。「生演奏」が演出の軸となります。
テーマは「 幻想 」。
キコ/qui-co.の旗揚げ公演「はなよめのまち」がベースになっています。少しだけ匂いが似ています。
■鉄とリボンにおけるスケッチ(あらすじに代えて)
物語は渋谷区のライオンズマンションの一室から始まる。
日曜日。訪れた春の静寂の匂いを嗅ごうとサッシ窓を空ける。築30年のマンション。錆びたレールは金切音を立て重くひっかかかる。無意識の脳裏にストレスが蓄積する。窓を開けるのはそこでやめた。中途半端に開いた空間から暖かな排気ガスの匂いが舞い込む。二日酔いの頭に痛みが走る。
彼女の名は、ナギ。記憶がない。
彼女のくちびるは乾いている。上のくちびると下のくちびるが幾度か接触しては音を奏でる。
それは歌だった。
男がナギの声を聞いたのはそれが初めてで、その歌について尋ねるとナギはこう答えた。
「はなよめ。」
その単語を口にすると、ナギの全身から汗が噴出した。どうして泣いているのかは本人もわからない。フローリングには水溜りができた。まるで産声のような泣き声をあげた。
ナギの眼球は中空を見ている。
どこからともなく、ひとひらの桜の花びらが部屋に舞い込みナギの眼前を横切った。またくちびるは歌を唄った。今度ははっきりと。
彼女の脳が痛烈な追憶を始めたのだ。
この物語は彼女が「はなよめ」だった時代の記憶である。
場所は、小さな、暖かな島。地図に無い町。
そこには、町の規模にはそぐわない巨大な神社がある。
正午には必ずサイレンが鳴り、皆立ち止まり黙祷を捧げる。
繁華街がある。小さな遊園地や劇場もある。
漁業も農業も無い。産業がないのに娯楽だけがある。
そう。この町の特産品こそ「はなよめ」。
特権階級の人間のために教育された「はなよめ」は秘密裏に売買され、この町を出て行く。そして誰一人として二度と戻ることはない。
彼女が町に生きたかつての日常。
それはまるで幻想のようだった。
町は歌にあふれ、下駄の音がそこかしこに乱れる。
人々は夜を愛し、朝を憎んだ。
夕闇に輝きだすわたしたちの生命活動。
橙色の提灯が、わたしたちの裸足をお社に導くの。
赤いりんご飴を齧りながら、わたしたちは少女でなくなったの。
死に物狂いで逃げた時、前を走るあなたのお香に汗と血の匂いが混じっていたの。
「わすれないでね」
みんなそう言って、いなくなってしまったの。
なのにわたしは忘れてしまう。
田んぼは水が張られてキラキラのあぜみち。誰もいない道にオルガンが置かれている。季節の風が吹くたびにオルガンは勝手に鳴るから。
おもいだしてね。わたしを。うたうあなたのこえは。だいすき。
あまりにも優しく
あまりも残酷な少女達の脱出劇。
―「鉄とリボン」