キコの旗揚げ公演です。
肌を破かないで出血するような、鼓膜を揺らさないで脳震盪を起こすような、性交を用いず妊娠するような、五感や生の理を狂わす演劇。
禍々しくも美しく、可愛らしい「はなよめ」たちのお話です。
10年代の始まりにふさわしい幻想がここにはあります。
【ストーリー】
1984年。人々がまだ、世界はひとつだと夢を見ていられた時代。
舞台は、はなよめのまち。
戦後、進駐軍の管轄から隠すように廃線となった線路がある。
途切れた線路の先を勇気と共に歩み、ふたつほど山を越えると、やがて、かつては駅として機能していた社(やしろ)がある。三本足の鳥居をくぐり、あぜ道を辿れば大きな旅館が見える。
地図に無い町。はなよめのまち。
この町の特産品は「はなよめ」。
この町に生まれた少女は教育を施され、「はなよめ」となって売られていく。日本の特権階級の人間のために作られる、特別な花嫁。
まちは夜明け、堕ちてきた藍色に濡れる。
旋律のような喜びが、まちの女達を触発する。
ピアノの音が坂の上から漏れてきていた。女たちが生命活動を始める。土手の上を歩く花嫁たちに、農家の男たちが手を振る。
決して触れることの許されない、汚れた手が橙色の光で煤けている。
看護婦たちが笑っている。
春祭りが近い。
ナギは、これが最後の春祭りになるかもしれないと感じていた。それは誰にも言わなかった。
本当に本当の最後まで、言わなかった。
わたしたちの肌は、いつか破けてしまう。
ぼくたちは飛び散ったあたたかな飛沫を浴びて、大人になるんだ。指が5本では足りない。弱い。
ぼくは(わたしは)離れることのない手が欲しい。
作・演出 小栗剛
【CAST】
堀奈津美(DULL-COLOREDPOP)
東澤有香
如月萌
佐藤健士
酒井和哉
木下祐子
吉田小夏(青☆組)
田中のり子(reset-N)
千葉淳(東京タンバリン)
木村友美
三枝貴志(バジリコ・F・バジオ)
サキヒナタ
小栗剛(キコ/qui-co.)
【舞台監督】桑原淳
【照明】ミゾカミクニコ
【音響】井出”PON”三知夫(La Sens)
【美術】松本謙一郎
【衣装】萩野緑
【映像/宣伝美術】荒船泰廣(sushi film)
【宣伝写真】堀奈津美(*rism/DULL-COLORED POP)
【振付】如月萌
【劇中音楽】yusuke kamijima
【制作】北澤芙未子(DULL-COLORED POP) 、赤羽ひろみ
【協力】
(株)エムマッティーナ、DULL-COLORED POP、青☆組、reset-N、東京タンバリン、バジリコ・F・バジオ、sushi film、La Sens