■鉄とリボンにおけるスケッチ(あらすじに代えて)ver.3

春の海。暖かな島。地図に無い町「はなよめのまち」。
大きすぎる神社の隣には製紙工場がある。
煙突から放たれる白い湯気は海岸からでも見える。
誰かの庭に少女たちが集まり、この春一番の冒険を企てる。

「下弦の月夜。『はなよめ』に会いに行こう。」

土手を横道に逸れ、見返り柳を目印に五十間坂を下りる。
そこに遊郭はあった。
茶屋が軒を連ねた先には小さな遊園地や劇場さえある。
夜が近づく頃、女たちは生命活動を始める。街角のどこかで誰かが歌を唄う。
その声を合図に街の灯が燈ると、夕映えの蒼い空の下、
破裂しそうな活気が茶屋の裏路地にまで満ちていく。

この町の特産品こそ『はなよめ』。

「アルカの祭」と呼ばれる祝祭は唐突に行われる。
祭の日、誰かが『はなよめ』を連れて行く。この町を出て行く。二度と戻ることはない。
その日のために『はなよめ』は育てられる。作られる。その日を待つ。
少女たちは『はなよめ』に憧れる。死んでしまいそうなほど胸を焦がして憧れる。
その美しさに憧れる。白い手の可憐さに焦がれる。誰をも見ない冷たい目に、畏れる。
わたしも『はなよめ』になりたいと願う。

これは、わたしの物語。
わたしが町で暮らした記憶。

最後の日は、幻想のようでした。
わたしたちが逃げる田んぼのあぜ道は、水が張られてキラキラ。
裸足がどろ水を蹴り上げました。
乱視の視界が滲んだ向こうに捉えたものは、
誰もいない道に置かれたグランドピアノ。
ねえ。
わたしが弾かなくても勝手に鳴るから。
おもいだしてね。
わたしを。
うたうあなたのこえは。
だいすき。
さよなら、
アルカ。

キコ旗揚げ作品「はなよめのまち」をベースに、
「幻想」のテーマのもとまったくの新作へとリ・ボーン!
会話劇のスリルと音楽生演奏のギグ!
総勢21名のキャストによる幸福のクラップアンドステップ!
先の読めないキレキレのストーリーテリング!
ふりそそぎ、結びつき、破裂する「ことば」のマジック!
そして立ち上るのは美しい遊郭世界。可愛い残酷世界。懐かしい生命世界。
現実の体のままご来場ください。浮世に宝物を探す冒険をしましょう。

さあ、幻想はどこにある?

キコ/qui-co.が贈るファンタジー音楽劇。
「鉄とリボン」